味の素ナショナルトレーニングセンターで合宿をする中・高校生に、オリンピックで活躍した選手の体験談を聞いていただくことを目的に、メダリストへのインタビューを実施した。
今回は2004年のアテネオリンピック、競泳女子800m自由形で金メダルを獲得した柴田亜衣選手に、オリンピックを目指す中・高校生へのアドバイスをお聞きした。
■インタビュー

聞き手:柴田さんは中・高校生のころ、どのように毎日の厳しい練習を乗り越えてきたんですか?
柴田:実は、そのころの先生は大変厳しい方だったんです。だから、「怒られたくない」一心でがんばっていたということはありますね。
それ以外では、夏になると合宿があって、その時しか会えない水泳の友達に会えるのが楽しかったです。合宿に来たら一緒にがんばろうね、って言い合った友達にまた会いたいがために、がんばっていたということもあります。
あとは、試合でベストタイムが出たら、やっぱり楽しかったんですね。
聞き手:そのころから競技成績は良かったですか?
柴田:まったくダメでした。中学校では2年生の時に全中に出ただけで、中3では標準記録を切れずに出場できませんでした。中・高校生のころは順調ではなかったです。
聞き手:他の人に勝つことよりも、自分の中で少しずつ高い目標を立てて、それに向けて努力していく、という感じですか?
柴田:だと思いますが、あまり深く考えながらやっていた訳ではないんです。でも、水泳はタイムで結果が出るので、ベストが出ていれば充実感があります。振り返れば、少しずつでも伸びているという実感があったからやって来れたのかな、という気はしますね。
聞き手:では、その頃水泳をするうえで大切にしていたことはありますか?
柴田:当時、全国大会に出場することもありましたが、レベルの高い大会に行くほど、自分より強い人、速い人がいっぱいいます。それを見て気後れするのではなく、何かひとつでも、新たな目標や自分の課題を見つけて帰ろうと考えていました。
聞き手:まわりからいろいろな技術を学んだり、刺激を受けたいということですか?
柴田:私は同い年の人ができているんだったら、自分でもやればできる、って考えるタイプだったんですね。オリンピックのようにテレビで見ているだけだと自分とは別世界だと思ってしまうんですが、大会に行って自分の目で見てみると、自分でも出来そうだと思えちゃうんです。
だから、この人はこういう泳ぎをすることで勝てているな、自分よりこの部分がいいな、ということを考えながら見ていました。
聞き手:柴田さんから、中・高校生で水泳をがんばっている選手へのアドバイスはありますか?
柴田:まず、ずっとどんな大会でも勝ち続けるってことは少ないと思います。ずっと調子がいい人もいないと思うんです。その「ダメな時」こそ頑張りどころというか、負けた時に自分がどう気持ちを強く持てるかが大切なんだと思います。それが一番難しいんですけどね。
聞き手:そのためにはどうしたらいいですか?
柴田:うーん。私は水泳なので、「ライバルは?」って聞かれると「自分自身」って答える人が多いですよね。私も結局はそうなんですけど、でも、いつも「自分に勝つ」ことを目指すのは難しいですよね。やっぱり自分には甘えちゃうから。だからきつい時は、隣で泳いでいる人には負けないようにするとか、その時だけの目標を作ってみることもあります。
「全国大会に行く」という目的じゃなく、「全国大会に行った後のディズニーランド」が目的でも、たまにはいいと思うんですよ。それから「水泳の友達に会いたいから頑張る」とか。きつい時は、ずっと掲げてきた水泳の目標だけでなく、もっと気持ちを楽にできる、別のものに置き換えてみるのもいいのかなって思います。
■スタッフ振り返り
柴田さんはご両親の仕事の都合もあり、中・高校生のころはひとりで練習することも多かったそうです。そのような環境の中でも頑張り続けてこられたのは、「応援してくれる家族や、指導してくださるコーチの期待に応えたかったし、やっぱり水泳が好きだったから。」
人一倍多い練習量を支えたのは、厳しい練習の中にも楽しさを見つけ出す、心の強さだったのではないかと思いました。