現役時代にやっておくべきこと(5) 安藤 美佐子さん【3】

納得行くまでプレーして、
いろんなことをプラスにしたい


ando5.jpg「まだやるの?」という声があることは、知っている。高校を卒業して16年。もう十分ではないかと。一方で「また応援できることがうれしい」と手紙をくれる人たちもいる。

「世の中には何かを始めると反対する人もいるけれど、私はそれを否定しません。そういう感情、意見はあるのが普通だし、自分にこうしたいというものがあればあまり気にならないから。でもね、自分は"クビになったんだ"という事実はしっかりと認めて、受け止めたつもりです。力を出せなかったこと。チームを上げられなかったこと。いらないと言われたこと。理由を解読して、次は負けない自分になろうと。自分がもっと成長したい。ソフトボールで経験したことを、何かで返したい。チームを最短距離で1部リーグに上げ、常に上をめざしたい。誰が何と言おうと、自分に納得が行くまではプレーしたいんです」

設立4か月後に地元の人たちが後援会を発足してくれた。市役所の職員がそのときに配っていた名刺を、何気なく見た安藤さんは、その場で思わず胸が熱くなったという。


「名刺にね、"ベルマーレソフトボールチームを応援しよう"みたいな小さなシールが貼ってあったんですよ。びっくりしました。そしてものすごく感激しました。この方たちに恥じないように、自分たちが地域にできることはしっかりやらんといかんと、心に刻みましたね」


4月に新しいチームのユニフォームを着て初めての試合を迎えたときには、ふいに涙があふれてしまった。湘南ベルマーレのサッカーチームのサポーターたちが駆けつけてくれて、大きな旗を振りながら、ソフトボールチームの選手たちの名前を呼んでくれたのだ。またソフトボールができるという喜び。チームを支えてくれる人たちとの新しい出会い。オリンピックに出場したときとはまた違った緊張と興奮を感じた。


「ソフトボールを続けてきたからこそ、またこんなに新鮮な感動を味わえたんだと思いました。自分は幸せな選手だなぁと。今の私にできることは、全力でソフトボールをすることだけ。現役引退は考えていません。どんなカタチになるかはまだわからないけど、中途半端では終わらせたくないんです。すべての思いをソフトボールを通して伝えていきたい。まだまだこれからですよ」」


line.gif

【関連リンク】
●特定非営利活動法人 湘南ベルマーレスポーツクラブ
公式サイトhttp://www.bellmare.or.jp/


【プロフィール】
安藤美佐子(アンドウ・ミサコ)
1971年岐阜県生まれ。中学校でソフトボールを始め、夙川学院高3年のとき全日本シニア代表に選出。オリンピックはアトランタ大会4位。シドニー大会で銀メダルを獲得し、「世界一の遊撃手」の称号を得る。高校卒業後は太陽誘電、松下電工、デンソーで活躍し、05年2月湘南ベルマーレ・ソフトボールチームを発足。湘南ベルマーレチームは05年のクラブチーム県予選、関東予選を全勝で突破し、全国クラブ選手権に出場。また、クラブや大学、実業団が出場する全日本総合選手権大会の、県予選、関東予選も勝ち抜いて、9月の本大会に出場した。チームは05年11月に来季からの日本リーグ(2部リーグ)参加が承認された。
*JOC発行の「キャリアトランジションvol3」(2005.8発行)をWEB用に改稿して、掲載しています。

                                                 (取材:2005年6月)

早くも湘南ベルマーレ効果あり! 地域活性化のためにも期待しています 厚木市ソフトボール協会 副理事長
山口恵美子氏
初めて安藤さんがあいさつに見えられたとき、オリンピック報道で見たときとはずい分印象が違うので、びっくりしました。あれだけ華があり人気もある選手ですからね。クールでとっつきにくいんだろうなと。ところが実際の安藤さんはにぎやかで、さっぱりした人。気さくに話かけてくるし、楽しい人なんですが、でも場の空気を瞬時に読んでの気配り、会話の中で時折のぞかせる、勝つことへのこだわりはさすが勝負師だなと思いましたね。厚木市の協会の人たちはみんな本当にソフトボールが大好きなんですよ。私も同じ女性として力になりたいし。同志を得たりとみんな大歓迎ですよ。チームができたことで地域のソフトボール熱が高まればいいなと。 実際、湘南ベルマーレができたことで、クラブチームやレディースチームなどずいぶん刺激を受けていますし、ときどき教えていただいたりして、みんなとても喜んでいます。新しいチームの誕生なども期待しているんです。ソフトボールが盛んに行われるようになるのは、本当にうれしいことですからね。出会いは縁です。その縁を私たちも大事にしたいと思っています。選手はみんな礼儀正しいし、気さくで、かわいい娘ばかり。それぞれが地元の企業に勤めていますが、みなさんとても評判がいいですね。私たちは湘南ベルマーレのソフトボールチムをあちこち追っかけて、応援するのが今は楽しくて仕方ないんですよ。地域のみなさんに愛されるチームになってほしいと願っています。

本気で人生を賭け、覚悟を持って 叩かれたドアなら開けなければと思った 株式会社湘南ベルマーレ 代表取締役
真壁 潔氏
最初に断っておきますが、湘南ベルマーレが選手に給料を払っているのではないんです。提供できるメリットは3つ。"ブランド力""企画力""情報力"。選手は地元で働いて給料を得て、我々と共に支援者を探し集めて、チーム経費をまかなう。経済的援助を期待されても困ります。 アスリートの方から、話を聞いてほしいという依頼がくると、まず気になるのがその人が「どこまで人生をかけて自分の競技を広めたいと思っているか」「4畳半1間でも競技ができたら幸せという覚悟があるか」ですね。その人が話す言葉より、匂いでわかるんですよ。 安藤さんのことは正直に申し上げて、オリンピック報道ぐらいでしか知りませんでした。団体競技は個人競技よりお金もかかるし、 運営がむずかしいことはサッカーでわかっていますから、最初は会わないと断ったんです。そうしたら手紙を書いてきた。ベルマーレも支援企業から撤退された過去を持つので、安藤さんの必死な気持ちには共感もありました。  ただこちらに依存するだけじゃなく、自分たちの手で何かがしたい、何でもしますと。ソフトボールへのあふれる情熱を訴えてきた。ここまで言われちゃ、動かないわけにはいかないでしょう。 幸い厚木市のみなさんのご厚意もあり、3か月後に設立が実現しました。多くのメディアが取り上げてくださり、チームは順調にスタートを切ることもできました。定着できるかは、これから次第。既存の競技チームといっしょに、地域との共生、浸透をめざして活動していきたいと考えています。。

prev.gif