NPBセカンドキャリアサポート開設

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2007年10月、日本野球機構に「セカンドキャリアサポート」が開設され、プロ野球選手向けのキャリアサポートマガジン『New Ball』が発行されたという記事を、このサイトでも以前ご紹介させていただいた。


今回は、「セカンドキャリアサポート」開設の背景や、今後の活動予定などについてのお話を、キャリアサポート担当の手塚康二さんに伺った。


■個人任せだけにせず、プロ野球界全体で、キャリアサポート体制を整えることに


ある日突然戦力外通告を受けた選手は、次の進路をどう考えればいいのでしょうか。今までは個人的な人間関係(家族、地元の支援者、後援会)などで新しい道を探している選手がほとんどでした。もともと、プロ野球の選手というのは、個人事業主、いわば社長なのですから、契約が切れた後のことまでは、球団がめんどうを見るということは少なかったのです。


しかし、現役選手が余計な心配をせず、安心してプレーに集中し、力を伸ばすためには、個人や球団だけでなく、プロ野球界全体で、すべての選手をバックアップする体制を整える必要があるのではないかという声が、だんだんと聞こえてくるようになりました。同じプロスポーツのJリーグで、数年前からキャリアサポート組織が設立され、実績を上げていることも、そうした組織をプロ野球に設立したほうがよいのではないかと要請される、一因になっていると思います。サポート体制がしっかり整っている競技であれば、親御さんも安心してお子さんを送り出せます。少子化の時代、ご家族の理解というのも、子供が競技を始めたり、続けていくうえで大事なことのひとつになっているのです。

プロ野球選手の中でも、常に1軍で活躍していた選手であれば、引退後は後援会や地元の実力者の方などが世話を焼いてくださって、新しい仕事に就くことはさほど困難なことではありません。もちろん、その中で本当にやりたいことや満足が得られるかどうかというのはまた別の問題ですが。

セカンドキャリアサポートが主に役に立てるのは、長く2軍にいた選手や裏方の仕事に携わっていた方ではないかと思っています。実力者の知り合いやコネなどをあまり持っていない選手に、「セカンドキャリアサポートに行けば何とかなるかもしれない」「まずは話を聞いてもらおう」と、相談できる相手先のひとつとして、どこかで認識していただければいいなと。

1軍の選手は、日頃から企業の経営者などと名刺交換をしてビジネスの話をしたり、さまざまな分野の人たちと食事をしたり、後援会の方たちとの交流の中で世間話ができる人もたくさんいます。そういった機会を経験することで、社会的にある程度、“場慣れ”しているのです。ところが、高校を出て、野球だけ練習してきて、あまり野球関係者以外の人たちと交流の機会がない選手は、意識的に行動しないと、視野が狭くなってしまいがちです。そんな選手が、戦力外通告を突然受けると「自分は野球以外に何ができるんだろう」と、アタマの中が真っ白になってしまうこともあるかもしれません。


■野球関連の仕事を希望する人が多いが、正社員、正職員の募集は少ない


プロ選手たちのほとんどは、引退後、何か野球に関連した仕事に就きたいという希望を持っています。2006年度の引退後の概略を調べたところ、自由契約もしくは任意引退となった選手102名のうち、球団スタッフ(コーチ・フロント、他)35名、現役続行(日本プロ野球)19名、現役続行(社会人・地域リーグ、海外など)13名と、67選手が野球に関わる進路を選択しています。調査の段階では、22名が未定でしたので、おそらくその数はさらに増えているでしょう。

ただ、野球関連の仕事で問題になってくるのは、正式な社員や職員として採用される人はほんの少しで、1年ごとの契約社員など、暫定的な雇用形態が多いということです。球団のスタッフなど、職員の数も限られており、とりあえず契約社員で入団しても、一生勤め上げることは難しく、また保障なども十分ではありません。バッティングピッチャーなどは、チームによって仕事の範囲もさまざまで、「1日のうち短時間に集中して投げて、高い給与をもらうけれど、平均して、契約期間は長くない」というところもあれば、「バッティングピッチャー以外のスタッフ仕事などもこなしながら、それほど高い給与はもらえないけれどやや長めに働かせてもらえる」というところもあります。球団ごとに雰囲気もずいぶん違うものです。

キャリアサポートマガジン『New Ball』では、引退して3年未満の元選手の、新しい仕事先での働きぶりや本音などを紹介させてもらいました。今までは、引退した選手がどうしているかなど、ほとんどわからなかったのですが、読者となるプロの現役選手もまだ知っているような選手の近況を載せたことで、身近な人の話として参考にしてくれればいいなと願っています。野球と無関係の分野で活躍している人もたくさんいます。そういった情報をプロ野球選手たちに知らせることも、セカンドキャリアサポートの仕事だと思っています。

よりたくさんの職場に選手を採用してもらえるよう、一社一社企業を訪ねて、セカンドキャリアサポートという組織ができたことをお知らせし、企業とプロ野球機構との連携づくりを進めている最中でもあります。人材紹介業の認可を取得し、大手人材紹介企業の協力を得ながら、選手のみなさんにさまざまな仕事を紹介できるように、体制を整えています。


■新入団選手の研修会で、3つのポイントを伝えたい


高校卒の2軍選手の年間の最低保証賃金は、同じ年齢の世の中の高校卒の会社員の賃金よりも多いので、引退して最初のうちは、そのギャップにとまどうこともあるようです。自分と同じ年齢の人が、どれだけ収入を得て、どんな生活をしているのか、よくわかっていないのです。プロ野球選手は、他の仕事より高いお金を得ているのに、現役時代はすぐに高いクルマなどを買ってしまい、貯金がほとんどないまま引退して、そのときになって、お金に余裕がないので「仕事の内容はとにかく、お金になる仕事がしたい」と、選択肢を自ら狭めてしまう選手もいます。

セカンドキャリアに関しては、プロになったときから、3つのことを選手には意識してほしいと考えています。新入団選手の研修会では、次の3点について、説明する時間をつくってもらいたいと思っています。

* 誰でもいつかは選手をやめる日がくる。選手はサラリーマンではないので、自分で考えなくてはならない。
* 現役時代から、野球だけでなく、世の中の動きに関心を持ってほしい。ニュースを見たり、スポーツ紙の他に、一般紙も読んでほしい。
* ファイナンシャルプランをしっかりと考えてお金を使うこと。

若いうちは、自分がやめる日のことなんて考えられないと思うのですが、3つのことは、繰り返し、早いうちから伝え続けていこうと思っています。

Jリーグのように、現役選手に資格取得の勉強の機会を持たせたり、インターンシップなどを体験してもらいたいとも考えているのですが、現状では、たとえば2軍の選手が、そういった活動をしたとしたら、引退の準備ととられてしまうことも懸念され、現役選手に公に何ができるのかなどは、まだ様子を見なければならないと考えています。

セカンドキャリアサポートも始まったばかりですので、現状を見ながら、できることからやっていきたいですね。まずは今年の2月に2軍のキャンプを回って、こういうサポート体制ができてきたということを、キャリアサポートマガジン『New Ball』を配布しながら、PRしてこようと思っています。とにかく、存在を知ってもらうこと。そして選手には、限りある現役時代だからこそ、思い切り集中してプレーしてほしいと、思っています。


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【プロフィール】
手塚 康二(テヅカ・コウジ)
1948年東京都出身。71年明治大学卒業後、(株)ロッテアドに入社。86年(株)ロッテオリオンズに転籍。広報部、営業部、総務部、運営部に在籍。2007年6月に(社)日本野球機構キャリアサポート担当に就任。